ミッションクリティカルなITシステムのクラウド化が進む2023年 OCIの採用がさらに加速するトップインタビュー2023(1/2 ページ)

クラウドベンダーとして注目を集めてるOracle。第4のプレイヤーとしてその名が挙がることも多いが、一体何が優れているのか。「Oracleは第2世代」と話す日本オラクルの三澤智光氏に、Oracleの強みと第1世代との決定的な違いを聞いた。

» 2023年01月11日 08時00分 公開
[谷川耕一ITmedia]

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 クラウドのハイパースケーラーと言えば、「Amazon Web Services」(AWS)「Microsoft Azure」「Google Cloud」のビッグスリーの名前が挙がる。市場シェアだけを比較であれば、これら以外のクラウドベンダーは"Others"としてまとめられるのが常だ。しかし海外の報道などでは、第4のプレイヤーとして「Oracle Cloud」の名前が挙がっている。

 同社はどのような強みを生かし、新たなクラウドベンダーとしての地位を築こうとしているのか。日本オラクルの三澤智光氏(取締役 執行役 社長)に聞いた。

"クラウド第2世代"であるOCIはスケールアウトにもスケールアップにも対応

三澤智光氏

 AWSやMicrosoftと比較すれば、Oracle Cloudの収益は小さい。一方で、ハイパースケーラー3社の成長率が鈍化する中、Oracle Cloudは高い成長率を維持している。

 三澤氏は「Oracle Cloudは第4のハイパースケーラーになれるでしょう。実績を見てもそうなっています」と自信を見せる。その理由に同氏は、「『Oracle Cloud Infrastructure』(OCI)は『第2世代のクラウド』だからです」と話す。

 では第1世代と第2世代にはどのような違いがあるのか。

 三澤氏は「AWSなどをはじめとするクラウドベンダーは2010年頃までにできた"クラウド第1世代"です。2018年頃に登場したOCIは、後発であることを生かして全てを新しく作り替えました。明らかにものが違います」とその違いを解説する。

 第1世代はスケールアウト型のインフラとしては素晴らしく、「Netflix」や「YouTube」、さらにはオンラインゲームなどのワークロードを動かすには適している。しかし、これからクラウドベンダーにとって重要なのは「ミッションクリティカルなITシステムに最適化されたクラウド」を提供することだ。

 デジタルトランスフォーメーション(DX)を推進する上では、新しいインターネット上のサービスに注目が集まり、目新しいスマートフォンアプリの提供が必須と考えられがちだが、実際にエンタープライズ企業がそれらを生かしてビジネスに変革を起こすには、「既存のITシステムのモダナイズ」が欠かせない。

 しかし多くの企業は、既存のITシステムの維持に多くのIT予算を費やし、新たなビジネス変革をもたらすITシステムには投資できていないのが現実だ。既存システムの維持にIT投資の8割もの予算が使われているとされる日本市場では、特にこの傾向が顕著だ。三澤氏はさらに、「既存ITシステムを維持するための投資の大半が人件費に使われています」と三澤氏は指摘する。

 つまり、システムのモダナイズに取り組む上で重要なのは「システム運用管理の自動化」「無駄な人件費の削減」だ。そのために必要なのが「オンプレミスにあるミッションクリティカルなITシステムのクラウド化」であり、その上で機械学習(ML)を含めたAI(人工知能)などを用いた各種自動化の仕組みを適用することが重要だ。

 この「ミッションクリティカルなITシステムのクラウド領域」では、第2世代のクラウドベンダーに優位性がある。オンプレミスにおけるミッションクリティカルなITシステムのワークロードには、スケールアウトだけでなくスケールアップも求められ、三澤氏は「それができるのは第2世代のOCIだけです」と三澤氏は主張する。

 スケールアップ型の既存ITシステムのワークロードも、AWSなどのスケールアウト型のクラウドで動かせるが、ミッションクリティカルの用途で最適化するにはアプリケーションの書き換えが必要となり、それには大きなコストと工数を要する。「この部分に着目した議論が日本では進んでいません」と三澤氏は現状を話す。

 現在の日本市場では、SI企業が"手慣れている"クラウドサービスを顧客に提案するケースが多く、結果的に実績が多いAWSを採用しがちだ。しかし2022年を振り返れば、ミッションクリティカルな既存ITシステムのクラウド化でOracle Cloudが存在感を示したといえる。

 日本オラクルは、2022年7月7日に開催した2023年度事業戦略発表会で「ITコスト構造の変革」と「デジタル化による業務の自動化」という2つのテーマを掲げ、「日本企業の競争力向上を目指す」と宣言した。

 実際に三澤氏は2022年を「2022年はこの2つのテーマで良いアウトプットがあり、さまざまな事例を公開できました。顧客とオラクルの成功が合致したと言えます」と振り返る。OCIを採用してクラウド化に取り組み、その上で自動化の仕組みを活用してモダナイズを推進した企業が数多くあったようだ。

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